トリート・ウィリアムズ主演・シドニー・ルメット監督の1981年度のアメリカ映画である。
二十歳の頃に新宿の名画座ミラノで観た作品だ。
時代やその背景などの詳細は覚えてはいない。
完璧なフィクションであり、オリジナルストーリーだったのか?
はたまたノンフィクションの原作がベースだったのか?
それも覚えてはいない。
その様な事柄に関わらずに僕の中では傑作と讃える以上に素晴らしい作品である。
この作品に関しては「随分と昔に若かりし頃に観たので再見して色褪せるのでは・・・」
と言う様な心配は無い。
物語は汚職・賄賂の横行するニューヨーク市警の麻薬捜査員達を警察の内部から摘発を挑んで行くという話であったと思う。
彼ら麻薬捜査員達は捜査に関しては通常の権限よりも多くの力があり、そのために
「街の王子」と呼ばれていた様なのだ。
しかし、もう一つの側面として賄賂を受け取り普通では考えられない生活の様子から皮肉と揶揄を込められ呼ばれていたらしいのである。
その摘発の内部調査を依頼された一人の男をトリート・ウィリアムズが演じている。
彼もまた上部からの名指しが無ければ勿論、摘発される側の人物であったと思う。
登場人物が大変に多く、それ故に視点のポイントも必然的に広範囲に亘っていた。
その描かれ方が凄いと言うか匠の技の結晶なのだと思う。
脚本での掘り下げ方がとても深いのだろう。
彼ら一人一人の生業と家族の様子。
法律に於いて力を行使される側と行使する側の立場。
はたしてそれは善なのか悪なのか?正義なのか不義なのか?
そして観ている僕が感情を預けた犯罪の事実を立証させなければならない主人公の仲間への裏切りと情けと自分だけがこの摘発を逃れているというジレンマ・・・。
彼自身も窮地の真っ只中なのではあるのだけれども。
上映時間は168分である。
潜入捜査中の彼の正体が露呈するのでは?という危機感と麻薬捜査員たちとの心理戦はかなりの緊張感だった。終始それらは長い上映時間の間も緩む事は無かった。
鑑賞後に息も絶え絶えにもつれる足を引きずりよろよろと喫煙所に行き、一服した事は明確に覚えている。
「高校生の持久走よりも疲れたぜっ」と誰にとも無く呟いた様な気がする。
作品の張り詰めた空気と物語りを追い駆ける事に僕は大変だったのである。
「イチャモン」を付けるだけが得意技だった頃の僕が「観せて頂きました」と心から思った作品である。