久し振りの一人旅であった。
大昔の友人の所に遊びに行くので厳密に言えば「一人旅」とは言えないだろう。
2年前の夏に突然、彼がこちらまで足を運んでくれて蕎麦とか鴨焼きとか吟醸酒とか健康ランドをオカズにしながら「大笑い」したのだった。
その時以来「あの当時に比べれば円も高くなってるからさ・・・」と、誘惑されていたのである。
「誘惑」にはすこぶる僕は弱い。
僕は勿論その誘惑に乗っかりたかったし20年以上前に
ヘラヘラとフラフラと歩いた異国の街を再び訪れたかったのだ。
しかし実現は無理だろうなと、思っていた。でも去年の10月に「20世紀少年・第一章」を観たら僕の中のある部分が頭をもたげた。
「行こうかな?」と漠然と思ってしまったのだ。あまり良くはない、兆候だ。
しかし、こういう兆候があるからこそ僕は日々を過ごす事が出来るのだろう。
今年に入り戸籍謄本を取り寄せ新たにパスポートを申請しNESTAをネットで申請した。
近所の旅行代理店4,5件程回り「エアー・オンリーの格安チケットを」と、20回位言った。
「円」をTCと$のキャッシュに郵便局で換金した。郵便局で換金出来る事自体も驚いたが今回は1ドル100円を切っていた。
大昔の時はよくは覚えていないのだが190円前後だった筈である。
後は国内では僕が全く使わないカードが頼りである。
あちらの方ではカードが一番便利であり、面倒が少ないとの事であるのだ。これはどうやらツーリストに限らない様だ。
それから携帯も現地で使えるようにNRTで出発当日に受け取れるように手配をした。
「旅」の準備・手続きはかなり面倒くさいがそれなりに楽しい。
知らず知らずの間に旅モードの気持ちが出来上がって行くのだ。
些細な事で「時代」を感じてしまう「おとっつぁん」の僕である。

当然ながらシートのクラスはファーストだ。と、言うのは願望だけの大嘘でエコノミー・クラスである。
機内に搭乗するタイミングも最後だった。
13,4時間のフライトなので僕は「じぃーっと」は、していられない。
他の乗客の皆様はお行儀良くしていた。
LAVATORYにかこつけ機内の後ろの方で窓の外を見つめた。

この時にある女性のCAが僕の退屈に付き合ってくれた。少しのあいだお話しをした。充分に綺麗で聡明な方だった。
彼女は北米大陸の西海岸と東海岸の直行便が多かったのだが次回の編成からはパリの方の便のお仕事が増えるとの事だった。
「パリかぁー。良いじゃん。俺は行った事ないけど・・・」と、子供の様な事を僕が言うと彼女は「私はアメリカの方が好きなんです」と言った。この「好きなんです」は難しい。「仕事その物の場所として」なのか「お国柄」なのかはたまた「アメリカに現在の親しい人がいる」とか「パリには以前に面白くない記憶がある」とか、である。
僕はその事に少し興味が在ったのだけれども話題を変えた。
僕がストレッチとかをしながらエコノミー・クラスの機内を眺めながら
「みーんなよく、じぃーっとしてられるよね。偉いよね」と言うと、彼女は返答に困っていた様だった。
僕はマズイ事を振っちゃったなと、少し遅れて思った。
そうだよな、ここで「相槌」なんて打てないよな。と、思った。
反省を込めて僕は「そりゃあーさぁー、僕が出すモン出せば問題ないんだろうけどさっ」と少しスネタ事を言うと彼女は吹き出した。こういう小さな出来事が「旅行」の密度を濃くしてくれる様な気がした。


成る程、これが君が「快適だった」と言っていた
こちらに来る時の「空の旅」の理由だったんだな。
まあ幻想もたまには必要だよな。
その通りです。
幻想が無いと寂しいもんです。
たまには良いでしょう。