本当に当惑させられてしまった映画であった。「それはどの辺りですか?どういう事なんですか?」と問われたら素直に答えようと思う。「泣けて泣けて」仕方が無かったのである。個人的な事であり、「当惑させられた映画」と言うよりも「泣いてしまっている」自分に困まっていたと言う方が良いのだろうか? 同じ事なのだろうか? まっ、良いか。何ったって相手は「オリバー・ストーン監督」の「9・11」である。 オリバー・ストーン監督の最新作であり、5年前の「9・11」の事件の世界貿易センタービルの 救助に携わった人々を題材とした限りなくノンフィクションに近いフィクションであるそうだ。「プラトーン」(86)という作品で脚本・監督をされていてその時に始めてこの方の名前を覚えた。 そしてこの作品はその年度のアカデミー賞の監督賞と作品賞を受賞していた。 少し振り返ってみれば20年ほどの間になんやかんやと ブー垂れながらもこの方の作品を全てとは言わないが目にしている。愛憎ってヤツであるのだろう。多分。とてもとんがっている方の様な印象を僕は強く受けるのである。
物語が始まったかなり前半からもう既に降参状態であった。ニコラス・ケイジ演ずるジョン・マクローリンが部下を指名して 破壊されたビルから落ちてくる瓦礫の中を一歩一歩進んでいく辺りからである。 周りの状況を確認しつつ、自分自身の恐れを克服しながらも 部下の表情に目を配り、立ち向かう術を考えている姿にである。 前作の「アレキサンダー(04)」は未見である。 僕がこの方の存在を知ったのは冒頭で叩いたとおりに「プラトーン」である。 しかしそれ以前にもこの方の脚本作品には触れていたのである。 「ミッドナイト・エクスプレス(78)」 「スカー・フェイス(83)」 「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン(85)」 監督はアラン・パーカー、ブライアン・デ・パルマ、マイケル・チミノである。 そうそうたる顔ぶれである。 今、こうして改めて思い出してみると何となくオリバー・スト-ン監督の色合いが 強かった様な気がしないでもない。 17,8の頃から22,3の頃まで知らず知らずの間にオリバー・ストーン氏の 放っていた物を吸収していたのである。 関係有るのか無いのか解らない話題を三つ。 *沢木耕太郎氏の「深夜特急」は面白かったです。 *大陸を旅行した時にキー・ウエストに行く途中にマイアミを経由したのだけれども全く街を歩いてみようという気にならなかった。 *都内某繁華街の地下にはもやしや豆板醤を栽培・製造している場所があるそうである。 僕が蛇口を「節水」という標語の前で捻った時の様になってしまったのは 彼ら二人が海兵隊の二人に発見された所からラストまでである。 息をこらえ何とか嗚咽を抑えるのにかなり苦労した。 泣ける作品が良いとは思わないし自分の中でも大好きであるとは限らない。 しかし、どうやらツボにはまってしまった事だけは事実であるのだ。 ホントに涙というのは厄介である。 こうしてキーボードを叩きながら考えると救助する者が 己の職業にただただ忠実に出来る事を懸命に力の限りにしている所にやられてしまったのだと思う。 アメリカ合衆国という国家がこの惑星をある方向へと進めている 行為を全てとは言わないが少しは知らず知らずの間に 見聞きさせられている。 「その類のプロパカンダの映画じゃねぇのかよ?」 と、言われてしまえば返す言葉は無い。 この作品の中の登場人物達は僕がこれまでに各国の様々なメディアから 事件後に時間を経て得た情報を勿論知らない。 「9・11」「同時多発テロ」等と言う言葉さえ知らなかったのである。 当然である。 この事件の輪郭の様な物など全く知らずに自分自身の 日々の業務を行った人々とその家族の物語りであるのでは? と、僕は感じたのである。 オリバー・ストーン監督の次回作は詳細は不明ではあるが米軍の アフガニスタン侵攻を描いたものであるそうである。 ちなみにIMDbで今回の「W・T・C」の脚本を担当されたアンドレア・バーロフさんという方のお顔を拝見した。 僕の勝手なイメージとは随分と遠いふっくらとした柔らかい笑みを浮かべた女性だった。 「9・11」という事件で亡くられた方々 そして消し去り難い思いを、 今、現在も抱いている方々に ご冥福と少しでも穏やかな日々が再び訪れる事を希望しております。 随分と陽も短くなり肌寒くなりました。おでんが食べたいこの頃です。