僕らの車は国道から数キロ外れた農道を走っていた。
道は整備されてなく、時々窪みを越えるたび
助手席の彼女は引きつった笑みをうかべていた。
畑には丸々としたスイカが数キロにわたり実っている。
「もうすぐ海が見えてくる筈だよ 」と僕が言うと
助手席の彼女は子供のようにはしゃいだ。
僕は宛もなく走る先に、いつか夢で見た海岸があると思っていた。
ルームミラーを見ると僕らの車が巻き上げた砂埃が
まるで飛行機雲のように続いていた。
海が見えた。
「窓をあけていい?」彼女は遠慮がちに言った。
窓を開けると車の中は潮の香り、畑のにおいでいっぱいになった。
目を細めて海を見る彼女は年齢よりも10歳以上幼く見えた…..
海岸が一番近そうな農道の畦に車を止め、エンジンを切りドアを開けると波の音以外はなにも聞こえない。
彼女の手を引き、目の前の茂みを抜けると夢で見たような海岸が広がった。
僕らの秘密の場所、遠い夏。
